今年観た映画3選

 

私の削除癖がそこかしこで炸裂し、ツイートはおろかインスタの投稿も消すわアカウントは消すわブログは消すわでSNS最大かつ唯一の利点であるアーカイブ機能の利をこの世で唯一享受できていない人間なので、たくさん観た映画やら何やらの感想をまったく見返すことができずにいる。そのため、そのためでもないが、今年観た映画3本の感想をまとめて書く。3選と言っているが分母が3で分子も3でございます。小学生の頃にアウトドア派の父親に親子で山を走る大会に参加させられ、運動神経が酷く悪いにも関わらず3位を獲得し自分、やりますやん。と思っていたら参加チームが私含めて3だったという出来事があったが、そういうことです。そもそもたったの3本で「たくさん」と言ってのける人間の感想を誰が読みたいと思うのか。観なさすぎにもほどがあるように見えるが、平均本数が1とかなのでたくさん観た方である。

 

○ Everything Everywhere All At Once

目まぐるしい展開と猥雑な画面それ自体に何かクィアネスが宿っているように感じられ、開始から10分で私の心の光となった。数多の世界線、可能性を飛び越えて、世界の命運を握っているのがたった二人の女たち(でもないのだが)、というのがとても眩しくありがたかった。俺はセカイ系に惹かれてしまうどうしようもない人間だから。私は家族愛というものについてやや距離を置いているのでそこはまあ、といった感じだったが、家族愛と諦観の衝突においてなるべくしてなった結末なのだろうと思う。壮大な闘いの末に物語の終わりを見るのは何の変哲もないランドリーの前でありオフィスの中であるという描きに覚悟を感じ、嬉しくなる。

私がクィアネスを見出したとはいえ、と思っていたが、女女が、しかも始まりの世界線では敵対していた二人が恋人として描かれていたのに驚き、少し泣きそうになった。あとこれはすべての観客が言っているだろうが岩となるシーンはもう、すごい。何も言えることはありません。異物を突き刺し、という下りには苦笑いだったが、これはもう合うかどうかなのでしゃーがありませんわ。

 

○ バービー

ここまでフェミニズム色全開の映画が引くほど売れたというのは何と言うか喜ばしいことなのではないでしょうか。バービーってそこまで耳目を集めるトピックか?と思うので。私が観に行った時点で既にかなりの反響と賛否両論があり期待していたのだが、正直肩透かしを食らった気分だった。あと演出が本当に好きじゃなかったです。

女の主体性という初歩的なフェミニズムを説いているため「男に観てほしい映画」といったスタンスなのかと思いきや、入り組んだメタ表現や皮肉が多くちゃんと伝わるのか?とかを思いながら観ていた。滑稽さや薄っぺらさを以て描かれるミラーリング(単純なものでもないと思うが)は上手いなと思った。でもやはりある程度の前提となる知識が必要な脚本であり、そこら辺の塩梅は難しいのだろうと。奥浩哉のツイートは論外だが象徴的で、あのようなバックラッシュに陥る人間をも包括するのは一作品では無理なのかもしれない。学べとしか言いようがないが……。

この監督とは画面のセンスが合わないのだろうなと思った。メッセージがどうとかではなく。面食らったが良い体験だったように思う。逃走シーンにCharli XCXの楽曲が使われているのは良かったし、エンドロール前にジャージークラブのビートとNicki Minajのラップが流れ始めた瞬間はかなり面白かった。持ち主の幻影が見えるシーン、仰天体験アンビリーバボーですか?

 

○ 君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか。へえ、あっしは……。

大変面白い映画だった。たくさん観た。2回です。映画をほとんど観ない私が金ロー以外で自主的に2回目を観るのは相当のことと思われる。もうただただ素晴らしく、改めて私が言うべきことなど何も無いように思うので、言いません。私はこれを一人の少年精神の揺れ動きを描いた作品と捉え、そのように捉えられるものがあるというだけでも感無量なのだが、あんなにも激しく美しい冒険であり、荒波で、落雷で、それでいて静寂で、圧巻としか言いようがない作品だった。一人称が「俺」の豪傑な船乗りの女と炎を愛し炎に燃えた女の存在は今でも私の心を照らし続けている。Everything Everywhere All At OnceとEXOのLet Me InのMVを思い浮かべながら鑑賞した。瞬間は永遠に、すべての場所はここに。喜ばしく思います。

木村拓哉の演技が素晴らしかった(後から声優を務めていることを知ったのだが)。何をやってもキムタクとはよく言ったものだが、あえて脇役をやればと思います。菅田将暉さんは鳥の役に専念すべきと思います。STAY SAFE!

あと主人公が自分の頭を殴るシーンで出る血の量が尋常じゃなかったので普通に笑ってしまった。

 

以上です。

 

 

年に3の人間が8も観られる訳がないだろう。